海の照葉樹林プロジェクト
1 提案概要
(1)提案内容
海と陸を高いコンクリートの壁で分断した防災ではなく、海との共存を前提とした減災対応として、照葉樹を使った防潮林ベルトを建設する。
(2)提案に至った理由
今回の大津波では、コンクリートの堤防の多くが決壊し、そのバックヤードの松の防潮林は根こそぎ流され、危険物となって押し寄せ、津波の犠牲者の多くがこれらによる圧迫死であったことから、倒木・流失しない樹種による防潮林の建設によって、津波の勢を削ぎ、圧迫死による死者を減じることが出来ないかと考えた。
また、震災後、気仙沼を襲った大火事が起きたことで延焼を食い止める防火帯の必要性を痛感したことや幼い頃から慣れ親しんだ椿( 椿油のキリン締め、笛作り、木登り)など、沿岸部に自生する照葉樹( 潜在自然植生)の活用を総合的に勘案し、本プロジェクトを提案することとした。
2 検討課題( 実現可能性)
・ 県の「海岸堤防高さの設定( 案)」との調整
・ 防潮林用地の選定
・ ナショナル・トラストの活用の検討
・ 防潮・減災効果の調査・分析
・ がれきを使った防潮マウンドの整備の検討( コスト軽減のため)
3 推進体制
県( 気仙沼地方振興事務所)、市( 農林課、観光課、土木課、危機管理課、都市計画課)、公募による市民、専門家
4 スケジュール
2 0 1 1 年~ 林の高さ別の減災効果の検討( 土木課)
推進組織のたち上げ、場所の選定
2 0 1 2 年~ 照葉樹の種や実の採集を、NPO など協力団体や有志、子供たちと始め、種苗作りを始める。毎年、この活動を継続してゆく。
2 0 1 4 ~ 1 5 年 植樹活動を開始。植樹祭を盛大に行う。以後数年植樹活動を継続。
2 0 3 0 年 照葉樹の森が形成される。
5 期待される効果
・ 灰色のコンクリートの壁に囲まれた津波防災ではなく、風光明媚な三陸の自然を活かした津波減災により観光産業に貢献
・ 火災の拡大延焼を防ぐ防火帯の役割
・ 住民が避難する学校や病院の周囲での照葉樹林づくりも重要
・ 三陸の自然植生の復元によって、市民の憩いの場の提供。
・ 同時に、探検・体験学習、環境教育の場として子供たちに開放
・ 津波モニュメントを抱く「鎮魂の森」、津波の教訓を引き継ぐ防災教育の場
・ 津波と対峙しながらも海と共に生きる三陸沿岸の人々が造り上げる自然と文化の複合的な遺産として将来位置づけられる。
・ 気仙沼市をモデルケースとして発信し、照葉樹林文化の北限としてのシンボル的照葉樹の森が、福島から青森夏泊半島まで続く…
6 派生・関連事業やプロジェクト( その他の活用)
・ フォレストベンチ工法活用、三陸リアス・ジオパーク、セントラルパーク整備、 観光メニュー開発などの諸プロジェクトに関連する。
・ 特にフォレストベンチ工法を活用した、道路や鉄道の土盛りによる防潮効果を、深根・直根性による土留めで補完し、津波による交通網の寸断を回避する。
・ 椿油の生産: 多量に含まれるオレイン酸は、動脈硬化の予防や血清コレステロール値を下げる効果・・・医療や健康食
・ 不乾性油( 高保湿力) で髪や肌を長時間保湿・・・美容
・ 超高木化したものは択伐し、気仙大工の技量維持プログラムに活用
7 その他
(1) 具体的な照葉樹林の育成方法
① 市民による植林・管理活動
・照葉樹の実や種子の採集・種苗を、教育活動の一環として行う。
・子供たちはポット苗を自宅で2 ~3 年育てる。
・これまで支援してくれた人々、団体、世界中の人々と共に植樹祭を開催する。
② 植林方法
・その土地の環境に適合した強い植物( 潜在自然植生) を使う。
・混植による樹種の多様性、植物・バクテリアの多様性を作り出す。
・3 本/ ㎡ の密植法による自然淘汰→ 環境に適応した強い樹種と固体を導く。
・3 年間、除草などの下草管理も市民共同で行う。
・4 年目から後は「管理しない管理」で、15 年後には森が形成される。